ファーストキャリアは、物語の世界観を創り出す仕事
――まずは新卒でCMや映画の美術装飾の世界へ進まれた背景と、仕事内容から教えてください。
村田:撮影現場を美術の面から支える装飾の会社で、主に大手企業のコマーシャルの映像などを多く担当していました。現場での役割は、まず作品全体のデザインを担当するデザイナーさんが絵コンテを書き出すところから始まります。その絵コンテに描かれた世界観に合わせて、スタジオのセットに配置する家具やインテリア、細かな小道具などをすべて自分たちで用意し、飾り込んでいくのが美術装飾スタッフの仕事でした 。お洋服のスタイリストさんとはまた別で、空間のセットを作り上げる専門の部署でしたね。
きっかけはすごくシンプルです。もともとテレビも映画も好きでしたし、絵を習ったり美術も好きだったので、それらを掛け合わせてお仕事ができたらいいな、と。とにかくその時々で、自分が面白いと感じること、楽しそうなことをやりたいという気持ちが強かった。そんな直感に従って歩み始めたのが、私のファーストキャリアでした。
――リアルな空間を飾る美術装飾の現場から、Webデザインへ舵を切ったきっかけは何だったのでしょうか?
現場の仕事は刺激的でしたが、プライベートの時間を割いて働き続けるとしたら、この先何十年も同じ環境で続けていくのは自分には難しいかもしれない、という思いが少しずつ芽生えてきました。体力的な面もそうですし、この先自分はどう生きていきたいのかを考えたとき、もう一度別のスキルを身につけて、手に職をつけたいと思うようになったんです。
普段の生活で目にするポスターのような、視覚的な表現には興味があったので、Webデザインを基礎から学ぼうと決意し、職業訓練校のWebデザインコースに通うことにしました。半年間、コーディングやデザインの基礎をしっかりと学んだのですが、そこにはマーケティングの視点はなかったです。どちらかというと「見た目が整っていればOK」という方針だったため、今振り返ると、本当の意味でのデザインはまだ学べていなかったなと感じます。
未知の領域に飛び込むことに不安がなかったわけではありません。でも、それ以上に自分の手で何かを生み出し、誰かに届けることに、新しい可能性を感じていたのだと思います。
「なんとなく」から卒業。職業訓練校を経て実務で磨くデザインの説得力
――職業訓練校を卒業してから、すぐにデザイナーとしてのキャリアをスタートされたのですか?
実は、学校を卒業してから実際に今のデザイナーとしての仕事を本格的に始めるまでには、1年ほどの期間がありました。デザイナーの求人はどこを見ても「実務経験3年以上」といった高い条件ばかり。「デザイナー専業で働きたい」という気持ちと現実のギャップの間で戸惑い、葛藤しました。
実績無くして前に進まないと気づき、実家のピアノ教室のWebサイトを作る手伝いから始まり、知り合いのデザイナーさんから依頼をいただいたり。自分のペースでコツコツと続けたことで、デザイナーとしての歩みを確かなものにしていけたのだと思います。
――その後、YOAKEとの出会いがあったのですね。数ある会社の中で、なぜYOAKEに応募しようと思ったのか、その経緯を教えてください。
私は主にWantedlyを使って仕事を探していました 。Wantedlyを通じてYOAKEのコーポレートサイトや募集要項に辿り着いたとき、実は社内に未経験から入社したデザイナーの先輩枠が見当たらず、「ここも私にはきっと難しいだろうな」と半分諦めのような気持ちもありました。実際にメンバーの皆さんを面談でお話ししていく中で、温かな雰囲気に強く惹かれました。何より、仕事も休みも大切にするという方針が、入社した今でも全く嘘がなかったと感じるほど、その通りだったんです。ここなら自分が無理なく、楽しく働く姿をはっきりと想像できると感じました。
オフィスの場所が下北沢にあるというのも、私にとってはとても魅力的でした。堅苦しすぎない自由な街の空気が、会社そのものの風土とも深く繋がっているように思えて、自分の性格や飾り気のないスタンスにうまく合いそうだなと直感したんです。ここでなら、未経験の自分でも一歩を踏み出せるかもしれない。そう確信して応募を決め、2025年にYOAKEの社員として入社しました。
――YOAKEのWebデザイナーとして歩み始めて、どのような変化がありましたか?
入社した当時、社内には私の他に数名の経験豊富なデザイナーの先輩方がいらっしゃいました。実務としてのWebデザインはYOAKEが初めての挑戦だったため、毎日が新しい学びの連続でしたね。
特に大きな変化は、マーケティングの視点でした。実際の案件に携わり、先輩方からレビューを受ける中で、「ユーザー目線でどのように情報を設計するか」「なぜこの要素が必要なのか」を突き詰めて考える習慣が身につきました。経験を重ねるにつれ、それまで個別に学んでいた知識が少しずつ結びつき、点と点が線になっていくような感覚がありました。
レビューの際も、単に個人の好みや感覚で意見を伝えるのではなく、なぜその修正が必要なのかという理由を添えてくださいます。例えば、新製品のバナーを制作したとき。「新製品らしさが足りない」とご意見をいただいたことに対して先輩は、他のバナーをリファレンスとして並べて「なぜそう見えるのか」を、丁寧に解説してくれました。その際、あしらいやフォントの選び方、余白や色合いといった具体的な要素を紐づけてくださったことで、判断の軸そのものも学ぶことができました。
単なる制作を超えて、対話からビジネスの課題解決へ
――現在はコーポレートサイトやLP、メルマガ、バナー制作など、多種多様なデザインに関わっている村田さんですが、クライアントの要望に対し、背景にある意図を汲み取るために、どのような対話を心がけていますか?
私は、社内外問わず密に連携し、積極的にコミュニケーションを取ることを心がけています。ディレクターの先輩と一緒にミーティングや定例へ参加し、直接クライアントの声に耳を傾けることで、文字情報だけでは見えてこない真の目的やコンセプトの核を深く理解するようにしています。
ただ指示通りに制作するのではなく、社内の知見も借りながら「そのアウトプットが本当にお客様のビジネスの課題解決に繋がるのか」を常に議論し合う。そうやって対話を重ねるからこそ、本質的な価値提案ができると考えています。
例えば、建設会社のコーポレートサイトの事業案内ページの制作業務において「施工前、施工中、施工後の画像を横並びにしてビフォーアフターが分かるようにしたい」という要望をいただいたことがあります。
そのとき私は、ディレクターと相談しながら「ユーザーにとっては、こちらのレイアウトのほうが情報の優先順位が伝わりやすいのではないか」「こちらの見せ方のほうが企業の信頼感につながるのではないか」といった観点から、背景にある目的を踏まえた構成案を提案しました。
結果として、お客様に喜んでいただくことができました。どの案件においても「本当の意図」を汲み取って形にすることこそが、いまの私の大切な役割であり、YOAKEらしい成果に繋がっていると感じています。
LP制作とStudio実装から学ぶ、先を見据えたデザイン思考
――最近では自社のLP制作で、初めて全体のディレクション進行を任されたそうですね。そのときに直面した壁について教えてください。
これまではデザイナーとしてプロジェクトの一部に参加することがほとんどだったので、進行の管理や大きな決定権はすべてディレクターの先輩方が担ってくださっていました。しかし、今回初めて自分がディレクションに挑戦することになり、「次にどのタスクを誰に振るべきなのか」「今どのようなアクションを自分が起こせば全体がスムーズに動くのか」という判断に迷いがあり、立ち止まってしまうことがありました。自分ひとりで抱え込んでしまうと、どうしても視野が狭くなってしまうんですよね。
そのときに身についたのが「力を借りる力」でした。自分が迷って手が止まっている時間こそが、プロジェクト全体にとって一番の損失であり、誰のためにもならないと気づいたんです。
YOAKEには、マーケティングやシステム、広告、ライティングなど、それぞれの分野にエキスパートが揃っています。自分ひとりで正解を出そうともがくのをやめて、素直に周囲にヘルプを出そうと決めました。
「力を借りる」というのは、決して自分で何も考えないということではありません。自分で調べ、考え抜いた上で「ここまでは分かったけれど、ここから先が難しいので知恵を貸してください」とオープンにする。そうやって自分の状況を明確にして伝えることで、周りの先輩方もより的確なアドバイスを投げかけやすくなると思います。
――ノーコードツール「Studio」でのサイト実装など、構築の領域にも挑戦されていると伺いました。
そうなんです。実際に構築を進めていくと、デザインの画面で見ているだけでは分からなかった細かな壁にたくさん突き当たりました 。普段のコードによる実装なら一瞬でできるような挙動が、Studioの仕様上だと非常に手間がかかったり、どの画面幅でも綺麗に見えるようにレイアウトを組むためには、そもそも元のデザインの構成段階から実装の再現性を考慮しておかなければ不可能だったりということに気づかされました。
こうした他職線の視点や仕様の裏側を知ることで、自分がデザインを提出する段階で「このテキストの長さのときは改行、または三点リーダーで省略してください」という細かなデザイン意図を、先回りして添えられるようになったのは大きいですね。
――これからYOAKEで描いていきたいデザイナーとしての将来像を教えてください。
YOAKEは、どのメンバーにも対等に接してくれる、本当に温かい組織です。入社当初デザインもマーケティングも未経験だった私ですが、フラットに意見交換できるし、もし挑戦したいことがあれば全力でサポートして背中を押してくれる。その懐の深さがあったからこそ、私がここまで着実にWebデザイナーとして成長できた理由だと思います。
これからは、チームでさらに成果を出すために、もっと積極的にディレクターやエンジニアのみなさんと連携できるように、そしてただクリエイティブを作るだけでなく、ビジネスの課題を根本から解決できるデザイナーへと成長していきたいです。私がかつて先輩方に引き上げてもらったように、今度は新しい挑戦をする人を支えられるような存在になりたい。仕事もプライベートも大切にしながら、YOAKEで私らしいクリエイティブを届け続けていきたいですね。
明日へのTips
村田さんの歩みから学ぶ、明日へのちょっとしたヒント。
- 1.
デザインに説得力を持たせる
- 2.
「力を借りる力」を磨く
- 3.
歩んできた道が、今の自分を支えている







